次へ   【記号類】

 今回は記号の話をしましょう。

   「点訳のてびき」の点字記号一覧の8頁に「記号・符号」が書かれています。
 たくさんありますね。しかし、墨字の豊富な記号類をこれだけで賄わなければならないので、かなり少ないとも言えます。

 では、まずカギ類とカッコ類のお話をしましょう。

 点字においては、カギ類とカッコ類の役割が決まっています。

  1. カギ類は、原則として会話文・引用文、強意・強調に用いる。
  2. カッコ類は、原則として説明や挿入に用いる。
       (以上、「点訳の手引き」56頁より)

 例えば《 》等は、良く出てきますが、これは2重カッコですから、説明や挿入に使うのなら問題はありませんが、強調に使うのは誤りと言う事になります。しかし、実際に本の中でこれが使われるのは、強調の意味で使われている事が多いようです。

 例: 《マキシム》で夕食をご一緒できませんか?

 この例では、マキシムと言うのはレストラン名で、説明でも挿入でも無く、ちょっと強調して2重カッコを付けているにすぎません。このような場合は、何か強調の意味のカギを使います。良く使われるのが、第2カギです。

2重カッコの例: −− −−    −− −−
         −● ●●まきしむ●● ●−
         −● ●●    ●● ●−

第2カギの例:  −− −−    −− −−
         −● −−まきしむ−− ●−
         −● ●−    −● ●−

 「 」(第一カギ)、〈 〉(第2カギ)、『 』(二重カギ)、( )(カッコ)は、原文とほぼ同じ形で書いて間違いありませんが、その他のカギ・カッコ類は、点字の意味に合わせて適当なものを選ぶ必要があります。
 “ ”等で強調されている場合は、第2カギを使います。もし第2カギが重なるような場合は、どちらかのカギを別の記号に置き換える必要があります。

 例:〈彼は、“昭和の時代”に生まれた人間だった〉

 この例では、第二カギで始まり、その中に“ ”で強調された文があります。双方を第2カギにするわけにはいきませんので、“昭和の時代”の “ ”を、第1カギや、第1指示符に置き換えたりします。

  1. 指示符類は、傍点や字体変更およびアンダーラインなど、強意の場合と語句の指示に用いる。(「点訳の手引き」66頁より)

 墨字においては、色々な強調の仕方があります。傍点を付けたり、文字を太くしたり、アンダーライン等を引いたり、いろいろですが、点字においては、第1指示符一つで間に合わせます。

 例: 彼は、あの事が気になって眠れなかった。

 −− −−     −− −−
 −● −−あの こと−− ●−
 −− ●●     ●● −−

  1. 点訳者挿入符は、同音異義語など点字ではわかりにくいと思われる語句や漢字、図表などについて点訳者が特に説明を加える必要のある場合に用いる。(「点訳の手引き」68頁より)

 点訳者挿入符を入れるのは、「特に説明を加える必要のある場合」だけです。ちょっと難しい漢字などに、やたらに挿入符を入れる方が見えますが、こういう記号類は、文章の流れを断ち切ってしまいますから、基本的にどうしても必要な場合に限って使うようにします。

 例: 金力と筋力

     −− −−       −− −−
きんりょく●● ●●かねの ちから●● ●●と
     ●● ●●       ●● ●●

     −− −−         −− −−
きんりょく●● ●●きんにくの ちから●● ●●
     ●● ●●         ●● ●●

 ※ カギやカッコ類の点字記号を見ていただければわかりますが、一部分を取り出すと、他の記号と同じ物が使われています。点訳者挿入符は、カッコを2個続けたものですし、二重カギや指示符の内側の記号は、第1カギと同じ物です。それに、開きと閉じの記号が同じものもあります。ですから、カッコやカギの内側にさらにカッコやカギが入る場合は、誤読の恐れがある場合があります。スペースを入れたり、別の記号に置き換えたりの工夫が必要になりますが、いろいろなケースがありますので、点訳のてびきを参考にされて、工夫して見てください。

 最後に、二重カギの閉じの記号を見てください。左側が読点と同じ記号、右側が第1カギと同じ記号です。ですから、以下の例をそのまま点訳すると、読点と第1カギの部分が、二重カギの開き記号に見えてしまいます。ですから、このケースでは読点は省略する事になっています。

 例: 「それで、」と彼は言葉を続けた。

   −− −−
それで−● −−と かれわ ことばを つづけた。
   −● ●●
    ↑
  省略します。

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