次へ   【分かち書き(2)】

 先回は、分かち書きの大原則の事をお話しました。しかし、「自立語の前は区切る」と言う事ですが、分かち書きされたものを見てみると、自立語の中でも区切られているのがわかります。例えば「総理大臣」は、辞書を見ると名詞となっています。つまり「総理大臣」で1つの自立語なわけですが、「そーり だいじん」と区切ります。これは、どう考えたらいいのでしょうか?

 実は、もう一つの大きな原則があるのです。

 《自立語内部に自立可能な成分があれば区切る》

 これが第2原則です。これを「自立語内部の切れ続き」等と言います。

 実は、この「自立可能」と言う言葉が非常に曖昧で、何をもって自立と言うのかが問題になってきます。はっきりわかるものもありますが、わかりにくいものも多いのです。ですから、「点訳のてびき」と「点字表記辞典」で区切りが違ったり、点訳グループによって区切りが違ったりすることになります。

 どういう場合が自立して、どういう場合が自立しないかを、統計的に考えて見ると、言葉の拍数が重要な要素になっている事がわかります。

 「総理大臣」の場合は、「総理」だけでも、「大臣」だけでも使います。ですから、「総理」も「大臣」も自立可能ですから、区切ります。では、「総理」の付く言葉をいくつか見てみましょう。

 「総理大臣」「副総理」「総理府」「総理府令」等。これらの分かち書きを見ていきましょう。

 》「総理大臣」 −− そーり だいじん
 》「副総理」 −− ふくそーり
 》「総理府」 −− そーりふ
 》「総理府令」 −− そーりふれい

 「副」とか、「府」等は、常識的に考えて、自立可能とは思えませんね。やはり何かにくっついている場合が多いでしょう。「ふく」は2拍、「ふ」は、1拍の語です。「だいじん」は、4拍ですね。
 他の単語でこのような例を探して見てください。2拍の語の多くは単独で使わない場合が多い事がわかると思います。3拍の語を探して見てください。大部分は、単独で使われるものだと思います。
 そこで、「2拍以下の語は続け、3拍以上の語は区切る」と覚えておくと、大部分はこれで賄えるわけです。
 さて、「総理府令」等のケースはどうなるのでしょうか? 「総理」は問題ありません。次に続く「府令」はどうでしょう? こういう言葉は辞書にありません。ですから、「総理府(これは辞書にありますね)」に「令(2拍)」が付いたケースとなります。このように、1つの自立語がどのように構成されているかを判断する事が分かち書きのポイントとなります。

 さて、今までの事は、「原則」です。「原則とする」と言う言葉の後には、必ず、「但し〜はこれにあらず」と言う言葉が付き物です(^^; この例外に我々は苦しめられるのですが、それを一つずつ攻略していく楽しみもなかなかのものなのです(^_^)

 2拍の語の「但し」は、漢語2文字の場合がほとんどです。「都市国家」の「都市」は、「とし」で2拍なのですが、これは単独で使いますから、非常に自立性の高い単語です。ですから、このようなケースでは、「とし こっか」と区切ります。ですから、漢字2文字の語は、2拍でも区切るものが多いと言う事を覚えておいてください。

 さて、原則ばかりでは、なかなか抽象的でわかりにくいですから、次回からは、点訳のてびきの中からピックアップして、点字表記のルールを実際の例を交えて勉強していく事にしましょう。

 最後に、ひとつ、「習うより慣れよ」と言う言葉があります。点字も日本語ですから、全てを理詰めで覚えなくても、数をこなせば自然にマスターできます。私たちが使う日本語の大部分は、それを習ったからでは無く、自然に覚えたものなのではないでしょうか?

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