【書 名】髪魚(2011年文學界12月号) 【著 者】鈴木善徳 【出 版 社】文藝春秋 【発 行】2011年12月号 【点 訳】桃子 【校 正】賽子 【作 成 日】2012年2月 【デ ー タ】全1巻
第113回文學界新人賞受賞作 降り続いた雨のせいで八日目に川は氾濫した。 五日目くらいから川面が堤防の頭を洗い、その様子をアパートの四 階の自室からぼんやり眺め、それから会議で発表するための新しい文 房具の企画書を書き、またベランダから顔を覗かせて黒く渦巻いた川 面を見やり、今度は気力を喪失し聞きたくもない音楽を流して七日目 が過ぎたのだが、まさか氾濫するとは思い掛けなかった。