第161回芥川賞候補作5作

【タイトル】むらさきのスカートの女
【著  者】今村夏子
【掲 載 誌】小説トリッパー2019年春季号
【ファイル】murasaki01〜02 246頁
【内  容】
第161回芥川賞候補作
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために〈わたし〉の職場で彼女が働きだすよう誘導する。『あひる』、『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の新作中篇。


【タイトル】カム・ギャザー・ラウンド・ピープル
【著  者】高山羽根子
【掲 載 誌】すばる2019年5月号
【ファイル】comegather・146頁
【内  容】
第161回芥川賞候補作
おばあちゃんは背中が一番美しかったこと、下校中知らないおじさんにお腹をなめられたこと、自分の言いたいことを看板に書いたりする「やりかた」があると知ったこと、高校時代、話のつまらない「ニシダ」という友だちがいたこと……。大人になった「私」は雨宿りのために立ち寄ったお店で「イズミ」と出会う。イズミは東京の記録を撮りため、SNSにアップしている。映像の中、デモの先頭に立っているのは、ワンピース姿の美しい男性、成長したニシダだった。イズミにつれられてやってきたデモの群衆の中、ニシダはステージの上から私を見つけ、私は逃げ出した。敷き詰められた過去の記憶とともに、私は渋谷の街を思い切り走る、ニシダにつかまらないように。


【タイトル】百の夜は跳ねて
【著  者】古市憲寿
【掲 載 誌】新潮2019年6月号
【ファイル】100noyo01〜02 310頁
【内  容】
第161回芥川賞候補作。「そこで生まれてはいけないし、死んではいけない。そんな島があるって知ってるか」。高層ビルの窓拭きをする翔太の、頭の中で響く声。そして、ガラスの向こうの老婆との出逢い。境界を越えた対話がもたらしたものとは――。新時代の扉を開く、著者渾身の傑作長編。


【タイトル】ラッコの家
【著  者】古川真人
【掲 載 誌】文学界1月号
【ファイル】rakko 122頁
【内  容】第161回芥川賞候補作
なにをたべるって? と姪のカヨコから言われたことのはじめの方を聞きそびれてタツコは訊き返す。パンたい、パン。そう声が返ってくると、パンや、わが(あんた)がたべるっていいよると? 今からパンをや? とタツコは言ってダイニングの冷蔵庫が置かれた辺りに、ぼんやりとした輪郭の何やら青いものが動いているように思われたことから、きっとそれがカヨコだろうと目を凝らした。


【タイトル】五つ数えれば三日月が
【著  者】李琴峰(り ことみ)
【掲 載 誌】文學界6月号
【ファイル】itutukazoereba-a 136頁
【内  容】
第161回芥川賞候補作。
 日本で働く台湾人の私。台湾人と結婚し、台湾に移り住んだ友人の実桜。平成最後の夏、二人は5年ぶりに東京で再会する。
 話す言葉、住む国――選び取ってきたその先に、今だから伝えたい思いがある。