【書 名】だれか鼠小僧を知ってるか 【著 者】伊藤栄洪 【出 版 社】明治図書出版 【発 行 日】昭和57年5月10日 【点 訳】マコト 【校 正】ナビール 【デ ー タ】全4巻
第一話 影の男...小間物屋『小藤』の店は、湯島天神の下にあった。 佐吉がその店に奉公して、まだ半年もたっていなかった。 第二話 風の男...男は隅田川べりで傷ついた少年を拾った。闇の夜 だった。弥一・みつ兄妹の住む根津には、人家の間を藍染川が流れてい た。男はそのみつのもとに風のように現れ、風のように去っていった。 第三話 男が泣いた...浅草寺の境内には大勢の人が群れていた。そ こには、キチのいままで見たこともないものがいくらもあった。キチは、 その一つ一つに目を丸くし、大きなため息をついた。男がキチを見送っ た飛鳥山のほとりには、音無川が流れていた。男はちりぢりに破いた証 文を音無川に投げすてた。そして、それがひらひら散っていくのを、じ っと見ていた。 第四話 男が消えた…初音の里はうぐいすの名所として知られる、木 立ちの多い別荘地である。広之進はここに住む油屋甚平衛の家でお咲を 知った。