【書 名】異域の人 【著 者】井上靖 【出 版 社】角川書店 【発 行 日】昭和35年7月20日 4版 【点 訳】滝 【校 正】ナビール 【作 成 日】1996年8月
「異域の人」 30年間西域にあって功を立て帰国して後生涯をかけ た仕事のはかない意味を死の直前に知るという無惨な目にあう、後漢 の人、班超の伝記。 「信康自刃」 家康の嫡男信康と母築山殿を破滅に追い込む運命悲劇。 「天目山の雲」 偉大な父を持った武田勝頼の不幸であり父の存在父 の声名に対する内心の反抗が破局へと導いて行く。破滅への運命の傾 斜を簡潔で力強い筆致で描く。 「利休の死」 秀吉と利休との初対面以来の宿命的な闘争が利休に死 をもたらす。自分の死を必然として受け取る利休の精神の充実が描か れている。 「桶狭間」 信長の上昇線が描かれている。他と自分とは違うという 意識を強く持ち遣りたい事をやった上で運を天にまかせようとする行 動的な男の幸運。 「漂流」 偶然の事で海神丸に乗り込み漂流したばかりに自分の秘密 をしまったまま武士を捨て漁師として生涯を送る会津藩士の運命。