第153回芥川賞候補作5作

【タイトル】朝顔の日
【著 者 名】高橋弘希
【掲 載 誌】新潮2015年6月号
【発  行】2015年6月7日
【点  訳】ハッチー
【校  正】桃子・賽子
【ファイル】asagao・268頁
【内  容】 妻は少し考えた後に、鉛筆を走らせる。――紙に書い
たことも、屹度、言葉でせう。その日に死んでしまふ気がするので
す――。昭和十六年、青森。凜太はTBを患い隔離病棟で療養する妻
を足繁く見舞っている。しかし病状は悪化、ついには喉の安静のた
め、若い夫婦は会話を禁じられてしまう。

【タイトル】ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス
【著 者 名】滝口悠生
【掲 載 誌】新潮2015年5月号
【発  行】2015年5月7日
【点  訳】Mandy
【校  正】賽子・ukiuki
【ファイル】jimi・214頁
【内  容】第153回芥川賞候補作。ジミヘンのギターのように幾重
にもフィードバックされる、苦い恋と東北バイク一人旅の時間。記
憶の不可思議さに迫る飛翔作!

【タイトル】MとΣ
【著 者 名】内村薫風
【掲 載 誌】新潮2015年3月号
【発  行】2015年3月7日
【点  訳】賽子
【校  正】桃子・ハッチー
【ファイル】msigm・216頁
【内  容】第153回芥川賞候補作。南アフリカの歴史的瞬間と日本
橋のサラリーマンの生。素粒子と神経伝達物質。時空を大胆に超え、
世界を共振させる新しい想像力!

【タイトル】夏の裁断
【著 者 名】島本理生
【掲 載 誌】文学界2015年6月号
【発  行】2015年6月1日
【点  訳】桃子
【校  正】ukiuki・Mandy
【ファイル】saidan・218頁
【内  容】大した会話はしなかった。帝国ホテルの立食パーティ
でばったり顔を合わせたけれど、柴田さんはそらした。シャツの袖
から白い手首が覗いていた。とっさに握りしめたフォークは、刺さ
らなかった。彼の手首の表皮を破くことすらできず、赤く反応した
だけだった。(本文冒頭)

【タイトル】スクラップ・アンド・ビルド
【著 者 名】羽田圭介
【掲 載 誌】文学界2015年3月号
【発  行】2015年3月1日
【点  訳】紫陽
【校  正】Mandy・賽子
【ファイル】scrap・232頁
【内  容】第153回芥川賞受賞作。カーテンと窓枠の間から漏れ入
る明かりは白い。掛け布団を頭までずり上げた健斗は、暗闇の中で
大きなくしゃみをした。今年から、花粉症を発症した。六畳間のド
アや通風口も閉めていたのに杉花粉は侵入し、身体に過剰な免疫反
応を起こさせている。ヘッドボードのティッシュへ手を伸ばした健
斗の視界に、再び白く薄暗い空間が映った。早朝だろうか。だが少
し前に杖をつく音で目覚めた際も同じ光景だった