次へ   【数字】

 今回からは、基本的な点字規則のお話をします。

 点字規則は、2001年に改訂された日本点字表記法に準じたものとします。「点訳のてびき(第3版)」は、この改訂後の点字表記法になっています。

 私たちが文字を調べようとする時に、国語辞典を見ますね。それで結果が得られれば充分なのであって、どうしてそうなるのかと言う理屈を考える人はあまりいないでしょう。
 点字においても、点字ルールをしっかり学習して理詰めで行わなくても、辞書に載っている事は、そのまま信じて良いと思います。もちろん、もう一歩踏み込んで、その成り立ちを学習するのも意義があると思います。
 点字関係の辞書は非常に少ないのですが、「点字表記辞典」と言う便利な辞典がありますから、これを活用しない手はありません。「労せずして」の区切りがわからない時は、表記辞典を見れば、一続きに書かれていますから、その通りにすればいいわけです。これを文法的に解釈しようとすると、なかなかやっかいです。

 しかし、この辞典も一般の国語辞典などに比較すると、圧倒的に語彙が少ないですね。調べたい語が必ずしもあるとは限りません。ですから、点字規則を理解している事は、いろいろ応用が効いて便利なのです。

 と言う事で、これから点字規則の主なものを説明したいと思います。とても全てを網羅する事はできませんので、詳しい事をお知りになりたい場合は、「点訳のてびき」や「日本点字表記法」をご覧ください。

 では、第1回目の今回は、「数字」の話をしましょう。

 まず丸暗記していただく事は、以下のように読む場合は、原文が「一つ」等のようになっていても、数字を使わず仮名で書くと言う事です。

》ひとつ・ふたつ・みっつ・よっつ・いつつ・むっつ・ななつ・やっつ・ここのつ・とお・
》ついたち・ふつか・みっか・よっか・いつか・むいか・なのか・よーか・ここのか・とおか

いち・に・さん・し(よん)・・・ と言う読み方の時は、数字を使います。
ですから、
ひとり・ふたり・3にん・4にん・・・ と言う、ちょっと変な事にもなります。

 「7人」は「ななにん」と読みますが、「7にん」と書きますよ。ややこしいですね(^^; 「8本」を「はっぽん」と読む場合、「8ぽん」と書けばよろしい。「8っぽん」とはしません。

 数字というのは、いろいろな読み方があります。文脈に最も適した読みを判断しないといけません。

 「一日」 −− 「1にち」「ついたち」「いちじつ」「ひとひ」「ひとえ」
 「一月一日」は、「いちがつ いちにち」とは発音しませんね。ですから、「1がつ ついたち」と書きます。

 ここで、数字の書き方の原則を書いておきます。

》数量的な意味があれば、数字で書き、数量的な意味が薄ければ仮名で書く。
》(原文が数字で書かれているか、仮名で書かれているかは関係有りません)

 なんの事か良くわかりませんね。説明も大変難しくなりますので、実際の例をたくさん経験していただくしか無いと思います。数字の中で最も難しいのが「1」です。点字表記辞典の「いち」の所を見てください。12頁にもわたって例が書かれています。

 実際に一番多く使われるのが「一番」でしょう。これは、「最も」と言う意味の時は仮名で書きますが、順番を表す時は数字で書きます。

 「町で一番美しい女性」 −− まちで いちばん うつくしい じょせい
 「あの女性は町一番の美人だ」 −− あの じょせいわ まち 1ばんのびじんだ。

 「一番」の部分を発音してみて、違いを感じて見てください。

 「暑い時は冷たいビールが一番やね」の場合はどうでしょう? こういうケースはどちらとも判断しにくいですね。数字だと言う人と、仮名だと言う人がいます。

「バケツに一杯水を入れた」 −− ばけつに いっぱい みずを いれた
「バケツ一杯の水」 −− ばけつ 1ぱいの みず
「栗ご飯を一杯食べた」 −− くりごはんを いっぱい たべた
「やつに一杯くらった」 −− やつに いっぱい くらった
「タバコを一服吸った」 −− たばこを 1ぷく すった。
「ここらで一服しよう」 −− ここらで いっぷく しよー
「一面の雪景色」 −− いちめんの ゆきげしき
「新聞の第一面」 −− しんぶんの だい1めん

 こういう例を書くと、いろいろ疑問の声が出て来そうですね。「栗ご飯を茶碗1杯分食べたんじゃない?」「ここらで、タバコを一服しようと言う意味だったら、1ぷくじゃ無い?」(^^; 結局数字の難しさと言うのは、文章をどう解釈するかと言う難しさなんですね。

 数字の事を書き出すと切りがありませんので、このくらいにしておきましょう。他にもいろいろ覚えなくてはいけない事がありますが、「点訳のてびき」の20頁から書かれておりますので、目を通しておいてください。

※ 大切な事を書き漏らしていました。「点訳のてびき」を見る時に、ちょっとコツがあります。「〜してよい」と言う記述と、「〜できる」と言う記述がたくさん出てきます。「〜してよい」は、この書き方を薦めると言う意味で使われていますから、「『千』の付く位で終わる数は、仮名で『せん』と書いて良い」とあれば、「5000」と原文に書いてあっても、「5せん」と書く方が良いと言う事になります。「点訳のてびき」の「本書の編集方針と構成」に目を通しておいてください。

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