次へ   【3:「う」「は」「へ」の事】

 では、前回の例題を入力したものをBASEの画面で見てみましょう。

 点字画面

 さて、最初に戸惑うのが、点字独特の表現です。「あしたわ」「うんどーかい」等、始めてこういう文章を見られる方は、「間違ってるよ」と思われるのですが、点字では「は」「う」「へ」は、発音通り、「わ」「ー」「え」と書く時があります。「時がある」と書いたのは、必ずしもいつでもそうなる訳ではないんですね。そこが難しい所なのです。

 「うんどうかい」は、「う」が2箇所に出てきますが、最初の「う」は「ー」とは書きませんね。「ーんどーかい」では何のことかわかりません。同様に「思う」とか「言う」等の場合も、「おもー」とか、「いー」とかは書きません。ここら辺りは誰にでもわかりますが、「君の意向を聞きたい」とか、「遊びに行こう」等となるとちょっと難しくなりますね。これらは、「意向」も「行こう」も「いこー」と「う」を長音に替えます。「思う」とか「言う」とか「しまう」の「う」が長音にならないのは、「動詞の語尾の『う』は、長音を使わない」と言うルールが有る為なのですが、こういう難しい理屈は後ほどの事として、最初は適当に発音通りで書いていただければ結構です。難しい事に興味のお有りの方は、『点訳のてびき』の最初の方を読まれると良いと思います。点字のルールがこの一冊に凝縮して書かれています。

 さて、10行目に「おかあさん」と書いてありますね。どうして「おかーさん」では無いのでしょう? それは、長音に替えるのは、「う」だけと言うルールが有るからです。ですから、「おとうさん」「おとうと」「いもうと」は、それぞれ「おとーさん」「おとーと」「いもーと」ですが、「おかあさん」「おじいさん」「おばあさん」は「う」が使われていないので、そのままなのです。

 「は」を「わ」と替えるのは、「う」よりははるかに簡単です。普通の文章で「わ」と発音する所を「は」と書く方が不思議なんですね。小学生の頃どうして「わたしわ」と言っているのに、書くときは「わたしは」と書くのか不思議に思った事はありませんか? 点字では「は」を「わ」と発音する時は、「わ」と書きます。「狩野派」等は、「かのうは」と発音しますから、「う」だけ変化させて「かのーは」と書きます。「かのーわ」ではおかしいですね。

 「へ」に付いても、「は」と同様に考えます。

 さて、点字は仮名ばかりの文字ですから、文節の区切りを正確にしないと意味を取り違えてしまう事があります。「ここではきものをぬいでください」と言う有名な例がありますが、「ここでは」で区切るか、「ここで」で区切るかで、脱ぐ物が違って来てしまいます。漢字で書かれていれば、「履き物」「着物」と言う事で、間違う事はありませんね。

 点字ルールに従ってスペースを入れながら書く事を「分かち書き」と言います。この分かち書きは、なかなか難しいものなのですが、その難しさが面白さともなります。 分かち書きは追々勉強して行くとして、当面は前に書きました「ね」とか「さ」を入れられる所で区切り、疑問に思った所は点字表記辞典で確認して行けば、だんだんと感覚がつかめてきます。習うより馴れろですね。

 さて、今回は一つだけ分かち書きを覚えてください。それは、5行目に出てくる「たけし□くん」です。「君」「さん」「様」「殿」等、人名に付く敬称は、区切ると言うルールがあります。ですから、「たけしくん」では無く、「たけし□くん」なわけです。「ちゃん」は敬称ではありませんので、「たけしちゃん」は「たけしちゃん」と一続きに書きます。
 敬称を区切るのは人名だけですから、童話などで出て来る「うさぎ君」は「うさぎくん」です。難しいですね。

 さて、次ぎの例題です。前のファイルに続けて入力していってください。途中に空白の行がありますね。点字でも空白の行を入れますよ。

 【例題2】 


■やっぱり、たけし君に追い越されて、ぼくは2番になってしまった。
■「またたけし君にまけちゃったわね」
■とお母さんは不機嫌そうな顔でボソリとつぶやいた。
■(ぼくだって、負けたくて負けたんじゃない)
■心のなかでぼくは叫んだ。

■家へ帰ると、おじいちゃんとおばあちゃんがお墓参りから帰って来た所だった。おばあちゃんがぼくに聞いた。
■「ひろちゃん、かけっこどうだった?」
■「2番」小さな声でぼくは答えた。
■「まあ、2番だったの。それはよかったわねえ。ひろちゃんって足が速いんだねえ」
■おばあちゃんは、去年も同じ事を言っていた。


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